優しい君に恋をして【完】
優は後輩を、真剣な眼差しで見つめていた。
「いつも遠山先輩は、自分のことよりも、
私たちのことを考えてくれて......」
後輩は身振り手振りを使って、
一生懸命優に言葉を伝えようとしていた。
「私たち、本当に遠山先輩には感謝しているんです。
だから......遠山先輩のこと、
えっと......大切にしてあげてください」
最後だけ教えた手話をすると、
後輩達みんなで優を見つめた。
優は、ハンドルを持ったまま少し下を向くと、
また顔を上げ、ゆっくりと頷いた。
なんか、嬉しかった。
後輩達の気持ちも嬉しかったし、
優は、聴こえる同世代の子を避けていると聞いていたから、
こうやって、後輩の言葉にちゃんと答えてくれたのが、
なんだかすごく、嬉しかった。
後輩達はまた笑顔に戻り、
「じゃあ、失礼します!」と頭を下げて、帰っていった。
優はまた俯いてしまっていた。
私がトントンと、優の肩を叩くと、
優が顔を上げて私を見た。
《大丈夫?》
そう聞くと、優は頷いて、
《嬉しかった》と、私と同じ気持ちを言った。
《もうひとり 会わせたい人がいるんだけど
会ってくれる?》