優しい君に恋をして【完】
何の紙?何が書いてあるの?
そう思って紙を覗き込むと、
それは、最初に手話を習った日に書いた、
紙いっぱいの優への気持ちだった。
「うわあああ!!!」
伝えた言葉もあるけど、
伝えてない言葉もたくさん書いてあるんだけど!!
恥ずかしくなって、優から紙を取り上げようとすると、
優は、パッとその紙を遠ざけた。
「ちょっと、返して!恥ずかしいってば!」
優は私の手の届かない高いところまで、
紙を持ち上げてしまい、
ぴょんぴょんと飛び跳ねて手を伸ばしている私を見て、
目を細めて笑っていた。
全然届かなくて、飛び跳ねるのをやめると、
優は紙を下ろし、また続きを読み始めた。
「もう、先生なんでよ.....」
「だって、もう伝えたんでしょ?」
「全部は伝えてないよ......」
「あれ、そうだったの?じゃあその紙とっておいてよかった!」
先生は、あはははっと笑ってまた椅子に座った。
優は、まだじっとその紙を見つめて読んでいた。
そして、その紙をたたむと、
制服のズボンのポケットにしまおうとした。
「いいよ!しまわなくて!」
私が腕を掴むと、優は首を振ってポケットにしまった。
《耳が聴こえないって知って
その時 好きだっていう気持ちに気づいたの?》