優しい君に恋をして【完】
先生は、優にもわかるように、
手話をつけて話してくれた。
「遠山さんの気持ちを知って、
彼女に何をしてあげられるだろうか、
自分に何ができるだろうかって思ったって。
優しい彼だね。
もう、良い手話の先生がそばにいてくれるんだから、
私の手話講習はおしまい。
二人でいる時間を大切にしなさいね」
先生......
「でも、時々また遊びにきてもいいよね?」
先生は「もちろん」と笑った。
「先生、ありがとう。
先生のおかげで気持ちを伝えることができた。
本当にありがとうございました」
私はぐっと頭を下げた。
先生は私の肩をポンポンと叩いた。
「気をつけて帰りなさいよ。
彼も......そうだ、名前はなんていうの?」
先生がそう聞くと、《成海 優です》と優が答えた。
「成海?もしかして、27歳のお兄ちゃんなんかいないよね?」
《9歳上の兄がいます》
優がそう答えると、先生は手を叩いて笑った。
「成海良くんの弟?」
優は不思議そうに頷いた。
「ほんとに?
あぁ、そういえば小さい弟くんがいたな......
あの子が、こんなに大きくなっちゃったの?びっくり!
弟くんも成海くんに似て、背が高くてイケメンに育ったね。
私の旧姓は重岡っていうんだけど、お兄ちゃん覚えているかな......
まぁ、お兄ちゃんにもよろしく。
じゃあ、またよかったら遊びに来てね」