優しい君に恋をして【完】
レッスンが終わり、
駅の駐輪場に行って、自転車に乗った。
中学校の同級生と結婚か......
ていうことは、
桜木先生は、私と同じ中学の出身だから、
旦那さんもこの辺の人なんだ。
仕事で東京行っちゃうのかな......
初恋かな.....
大恋愛かな......
素敵だな......
そんなことを考えながら、
家へと自転車をこいでいた。
家に着き、お母さんに桜木先生の旦那さんの話をした。
「やっぱり、音大卒でピアノ講師なんかしていると、
お医者さんっていうエリートと結婚できんのよ。
あすかも、頑張って音大目指せば?
あすかもエリートと結婚してほしいわ」
お母さんっていっつもこうだ。
エリート、一流企業、
一人娘だから、そう思うのもしかたないかもしれないけど、
私は、お母さんとは違うってーの。
お金じゃないんだよ、愛なの、愛!!!
一流企業のお父さんと結婚したお母さん。
二人を見ていると、
なんで結婚したのか、わからない。
お父さんは仕事が忙しくて、海外出張とかしょっちゅうで、
ほとんど帰ってこないし、
帰ってきても、全然しゃべんないし、
部屋も別に寝ているし。
私は、やだな......そんなの。
私は、ちゃんと恋をして、
大好きな人と結婚したいな......
そんなことを考えていたら、
また、朝出会ったあの人の顔が、浮かんできた。