優しい君に恋をして【完】
●大切な人
一緒なら
次の日の朝
今日は朝から暖かい。
ジャケットを脱いで紺色のベストで玄関を出ると、
いつものように、駅へと自転車を走らせた。
6番線のホームへと階段を下りると、
途中で優が立っているのが見えた。
......今日はカーディガンを着てないんだ。
いつも紺色のカーディガンを着ているイメージだったから、
白い長袖のワイシャツの袖をまくって腕を出している優が、
なんだか見慣れなくて、ドキッとしてしまった。
優は列から少し離れたところに立っていて、
その前に立つと、「おはよう」と優の顔を見つめた。
優は私の顔を見ると、目を細めて小さく頷いた。
ネクタイもしてないんだ......
カーディガンを着ていた時は、優はとても線が細い人だと思ったけど、
ワイシャツ姿の優は、なんだか男らしくて、
かわいい顔とのギャップに、ドキドキしてしまった。
ドキドキしたら、急に昨日のキスを思い出してしまって、
一気に頬が熱くなって、下を向いた。
いつまでもドキドキしていたら、そっと手を繋がれて......
ぱっと優の顔を見上げると、
優は反対の方を向いてしまっていたから、
私は繋いだ手をぎゅっとした。