優しい君に恋をして【完】
一緒に電車に乗ると、
またいつものように扉横の手摺を一緒に持ち、
向き合って立った。
優は、やっぱり窓の外を見ていることが多くて、
想いが通じ合う前と同じで、
電車の中では、何も話しかけてこなかった。
もしかして、自分が手話で話しかけたら、
私に迷惑をかけるとか、
まだそんなことを考えているのかな......
それともただ単に、両手が塞がっているから、
手話ができないだけかな......
じっと優を見つめていたら、ふと優がこっちを向いて目が合った。
「話しにくい?」
私がそう聞くと、優は首を振った。
「なんでも、話してね」
私の口元を見た優は、今度は小さく頷いた。
でも、私が降りる駅に近づいても、
やっぱり何も話しかけてはこなかった。
あの一言以外、声を出さない優。
もっと、私を信じてほしいな……
声を出しても大丈夫なんだよ。
いつだって、手話で話してくれていいんだよ。
もっと私を信じて……
そんな事を考えていたら、私の降りる駅に着き、扉が開いた。
電車から降りると、
ホームから優を見つめた。
優も私を見つめてくれて、私が小さく手を振ると、
優が指を動かした。
《明日 一緒に どこかに出かけよう》