優しい君に恋をして【完】
一緒に……
手話をした優を、ホームを歩く私の学校の生徒たちが、
ジロジロと見ながら通り過ぎて行く。
ほんとだ……手話をすると、周りがこうやって見るんだね。
優は、きっとこれが嫌なんだ……
でも今、手話で話しかけてくれて、
少しは私の事を信じてくれたのかなって、
嬉しくなった。
周りなんか関係ない。
見たい奴には見せておけばいい。
何も悪いことなんかしてない。
これが、私たちの普通の会話なんだから。
私は、大きくはっきりと優に手話で答えた。
《明日 一緒にいられて 嬉しい》
言いたい事はもっとたくさんあったんだけど、
そこで扉が閉まった。
《どこがいいか 考えておいて》
扉の向こうで優がそう手話をすると、
ゆっくりと電車が動き出した。
《わかった》
急いで答えると、優が見えなくなった。
明日は土曜日、これってデートに誘われたんだよね……
嬉しい……
一日中ずっと優と一緒にいられるんだ。
どこがいいかな……
一緒にいられるなら、場所なんかどこでもいいけど……
明日の事で頭がいっぱいになりながら、歩き出した。