優しい君に恋をして【完】
手が......
そう思った瞬間、優は離した手を私の頭にぽんっと乗せ、
心配そうな顔で、私の顔を覗き込んできた。
あ......心配させてしまっている。
違う違う、首を振ったのは、
嫌だとか、そういうことじゃなくて......
「今日、袖をまくっているでしょ?」
優は手を私の頭から離して、自分の腕を見て、
私をまた見つめた。
「かっこいいなって思って......」
優は、大きな瞳をまん丸にして固まった。
「優にじっと見つめられると、ドキドキする」
私がそう言うと、優は片手で自分の顔を覆って、下を向いてしまった。
なんか、正直に言いすぎた。
でも、変に誤解されるよりもいいか......
優は下を向いたまま手を顔から離すと、
パシッと少し強く私の手を握ってきて、
顔を上げるとまた、外を向いてしまった。
あれ、優......耳まで真っ赤だ......
ちょっといつもと違って、乱暴に手を繋いできたから、
怒ったのかと思った。
なんだ、照れているんだ......
そのまま全然、こっちを向いてくれなくなっちゃって、
最寄駅に着いて、一緒に電車を降りても、
ずっとそっぽを向いているから、
隣から優の頬をつんつんと指先で触ると、
歩きながら優は下を向いて笑ってくれた。
やっと笑った......
そしてまた一緒に駐輪場に行き、自転車を取ってくると、
優は何も言わずに、ハンドル掴んできた。