優しい君に恋をして【完】
何も話さずに、私の家まで歩いた。
横に並んでいると、話しにくいと思った。
それに、優はハンドルを掴んでいるし。
やっぱりちゃんと向き合って、優と話したい。
もっといっぱい、優の気持ちを聞きたい。
駅前通りを真っ直ぐに歩いて、
途中で住宅街へと曲がりしばらく歩くと、
四角い3階建ての私の家に着いた。
「ここがね、私の家」
家の前で止まり、自分の家を指差すと、
優は、私の自転車を家の脇に停めてくれた。
やっと私の方を向いてくれた優の前に立って、
顔を見ると、
優は少し笑って、指を動かした。
《さっき 何か言いかけて 言うのをやめてしまったから
何か 悩んでいるのかと思ったよ》
あ......そんな風に感じさせてしまっていたんだ。
そうだ、私、明日のことを言いかけて......
「明日のことを話そうと思っていたら、
電車が来ちゃったから......」
知っている言葉は手話をつけて、
わからない言葉は、口を読んでもらおうと、
ゆっくりと優の顔を見て話し始めた。