優しい君に恋をして【完】
抱きしめられて、
なんか……優って良い香りがするって思った。
頬を抑えていた手を、優の胸にそっと当てると、
抱きしめていた力が緩み、優は私の両肩を掴んだ。
じっと見つめ合うと、やっぱりドキドキして、
きっと真っ赤になっている私の顔を見て、
目の前で笑い出すから、
もう、どうしようかと思った。
優は私の頭をポンポンと撫でて、私から離れた。
《明日 10時に 迎えに来るよ》
明日10時......いっぱい一緒にいられる......
私は大きく頷いた。
優も頷くと、中学の方へと歩き出してしまった。
誰もいない、細い道。
優の背中を見ていたら、さみしさが押し寄せてきて、
少し走って、優の背中のリュックを掴んだ。
優は、驚いたように振り向いて、
もう一度私の前に立つと、優しく微笑みながら首を傾げた。
もう、どうしようもなく好きだと思った。
優に近付いて胸におでこをあてると、
頭を優しく撫でてくれたから、そのまま優に抱きついた。
優ももう一度抱きしめてくれて、
そっと肩を押されて見つめ合うと、
私の口元を見て......
でもそれは、
口を読んでいる時の表情とは違って、
ちょっと伏し目がちで......
ゆっくりとその顔が近付いてきたと思ったら、
唇に触れるだけのキスをした。