優しい君に恋をして【完】







「彼が来たの?」



玄関のところで、お母さんにつかまった。




「うん。夜ご飯ぐらいには帰ってくるから」



「そんな遅くまで......どこに行くの?」



「家......かな」



お母さんは、眉間にシワを寄せた。



「家なんて......ちょっと玄関の中に入ってもらいなさい」




「やだ。だって、絶対にお母さん傷つけるようなこと言うでしょ?



私、彼を傷つけたくない」



お母さんは、はぁとため息をついた。



「そんなこと言わないから。とにかく一度会わせて」


「絶対に、変なこと言わないでよ?」


「わかったから」



私は、お母さんを玄関に残して、ドアを開け外に出た。




そして、門扉の向こうで自転車に乗っている優の元へと駆け寄った。



「おはよう......」



優は自転車に乗ったまま、ペコっと頭をさげ、

私にハンカチ差し出してきた。


そっと受け取り、リュックにしまうと、

私服姿の優を見つめた。





優は、濃い目のグレーのシャツに藍色のカーディガンを羽織って、


デニムのパンツを履いていた。



自転車に乗ってきたせいか、いつもよりも髪がもっとふわふわとしていて、


なんだかいつも以上に可愛く見えた。


優の私服って、こんな感じなんだ......



かっこいいな......




じっと見とれていたら、優はハンドルを持ったまま、



ぐっと下を向いてしまった。






< 127 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop