優しい君に恋をして【完】







「ママ?今日ねぇ、お友達ができた」




あすかが幼稚園に入り2ヶ月ほど経った日、


なかなか友達ができないあすかが、


私が幼稚園に迎えに行くと、私の手をぎゅっと握って、

満面の笑みで私を見上げて、そう言ってきた。



「そう!よかったわね!お名前は?」


「ゆうちゃん」


ゆうちゃん?



「ほら、あの子」そう小さな指で差した先に、



かわいらしい子が、園庭に横たわった木の上を、


平均台のようにバランスを取って、行ったり来たりしているのが見えた。




そして、あすかはまたその子のところまで走っていって、


その子の反対側から木に乗って、その子のところまでバランスを取って歩き、


鉢合わせしたら「じゃんけんぽん!!」と、じゃんけんをした。



「ゆうちゃんのまけー!!」と言うと、



ゆうちゃんは、可愛く笑って、


木から下りて、また端っこから乗って......



とても楽しそうに遊んでいた。




あすかの、初めてのお友達


ゆうちゃん




「あすかちゃん、やっと幼稚園に慣れてきたみたいですね」



担任の先生にそう声をかけられた。


「えぇ......お友達が出来たって喜んで言ってて.....」



先生と一緒に園庭で遊んでいる二人を眺めた。




「昨日は、ひとり男の子を泣かせてましたけど、


あれは、その男の子が悪いので、あすかちゃんは悪くはないんですけどね。


ちょっと言い方もきつかったし、突き飛ばしてしまったのがね......



でもやっと、ああやって一緒に仲良く遊べる子もできたみたいで、



本当によかったですね」





また、じゃんけんに負けたゆうちゃんが木から下りた。




「ほんとにあすかは、気が強くて......


曲がったことが嫌いなので、お友達にきつく言ってしまうみたいで......


本当に、いつもすみません。



でも、ホッとしました。


あんなに楽しそうに......



同じクラスの子ですか?」



私がそう聞くと、先生は首を振った。




「いえいえ、違うクラスで、学年も違うんですよ。


もも組さん、年長さんなんですよ。


女の子みたいにかわいいから、ゆうちゃんって呼んでる子が多いですけど、

本当は男の子なんです。




ゆうちゃんも、お友達がなかなかできなくて。


昨日、あすかちゃんが泣かせた男の子は、

ゆうちゃんをバカにしていたんです。


それで、あすかちゃんがその子を叱り飛ばしたってわけです。


叱り飛ばしたついでに、突き飛ばしちゃって。



でも、ゆうちゃんはうれしかったと思いますよ。


今までそういう子がひとりもいなかったから」









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