優しい君に恋をして【完】
「お母さん?どうしたの?お母さん?」
玄関マットの上で膝まづいて、
両手で顔を覆ってしまったお母さん。
私はそのまま玄関にしゃがみこんで、お母さんの肩を揺すった。
「どうして......どうしてあすかは......
どうしてあすかは、この子なの......」
どうして......この子?
肩を揺する手を止め、言葉の意味を考えた。
「お母さん?どういう意味?」
お母さんは、両手から顔を出した。
「どうしてもこの子じゃないとダメなの?
この子だけは......やめて......」
涙目でそう訴えてきたお母さんの肩から、手を離した。
「ひどい......お母さんそんな言い方ひどいよ!
信じられない、そんなこと言うなんて。
どうして?優の何がいけないの?」
その時、トントンと肩を叩かれ、
しゃがんだまま振り向いて、見上げると、
優が心配そうな顔で私を見つめていた。