優しい君に恋をして【完】
そうだよね、これじゃ優は何の会話をしているのか、
全然わからないよね。
お母さんは泣いているし、私は怒っているし、
心配にもなるよね。
でも、この状況を優に説明できない。
私は、俯いて下唇を噛み締めた。
「何がいけないって......とにかくダメよ。
うまくなんて、いくわけない。
やめなさい、あすか。
家になんて行っちゃいけない!
別れなさい!あすか!」
お母さんは、私の腕を掴んで立ち上がった。
引っ張り上げられるように、私も立ち上がって、
私は思いっきり腕を振って、
お母さんの手を離した。
「そんなこと言うなんて......信じられない。
優のこと、何も知らないくせに!
私は、お母さんの思い通りになんかならない。
絶対に別れない。
私は一生、優といたいんだから!!」
そうお母さんに叫んだ瞬間、
パシッと左頬に痛みが走った。
私は左頬を押さえ、お母さんを睨むと、
お母さんは叩いた右手を左手で掴み、
俯いてしまった。
「そんなお母さん嫌い......
大嫌い!!!」
玄関から出ていこうとした私を、
優がすっと腕を出して引き止めた。
「優......」
顔を見上げると、
優は何か決意をしたかのように深く頷いて、
一歩お母さんに近づき、頭を下げた。
「ごめんなさい」