優しい君に恋をして【完】
優は、はっきりとした声で、
お母さんに向かって謝った。
私は、優の肩を叩いた。
「どうして?
どうして優が謝るの?
謝るようなこと、何もしてない!!」
私の口元を見た優は、ゆっくりと首を振り、
また、お母さんの方を向いた。
「僕だと 心配だし 不安だと思います
本当に ごめんなさい
僕は………
頑張ります
お母さんが 安心できるように
僕が 頑張ります
だから どうか もう少し
時間をください」
そう言って優は、まっすぐお母さんを見つめた。
こんなに長く声を出して喋っているのを、
初めて聞いた。
こんなに綺麗に喋れるんだ......
優の発音は、
私が思っていたよりもずっと綺麗な発音だった。
ちゃんとわかる。
ちゃんと伝わる。
優の気持ちが、本当に嬉しい......
お母さんは優から目をそらして俯いてしまった。
「どうしてこんなことに......」
そう言って、しばらく黙り込んでしまった。
優は、俯いたままのお母さんをじっと見つめ、
お母さんの答えを待っていた。
しばらく沈黙が続いた。
あまりにも長く黙っているから、
私が「お母さん」と呼ぼうと思った時、
お母さんが顔を上げた。