優しい君に恋をして【完】
お母さんは、優の顔を見たと思ったら、
そのまま全身を見るように、目線を下ろし、
足元からゆっくりと目線を上げ、
優しい眼差しで、優を見つめたと思ったら、
ぎゅっと目を閉じた。
そして目を開け、
「許すわけには、いかないの」と、
ゆっくりと苦しそうに、絞り出すかのような声で言った。
「なんでよ......
優の何がいけないの?
お母さん......」
お母さんは唇を噛み締め、ぐっと私の腕を引っ張った。
「家になんか行っちゃいけない」
私は掴んできたお母さんの腕を引き離そうとした。
「いや!!」
「あすか!!帰ってもらいなさい!
帰って!!.......帰りなさい!!」
お母さんは、大きな声で優に向かって叫んだ。
優は一度下を向いて、また顔を上げお母さんを見た。
「また 来ます
許してもらえるまで 何度でも来ます」
優は深く頭を下げ、私を見ると、
小さく頷いて、
そして玄関から出て行ってしまった。
「優......」
私はお母さんの腕を掴み、
思いっきり腕を振って引き離すと、
玄関から飛び出して、優を追いかけた。