優しい君に恋をして【完】




お母さんは、優の顔を見たと思ったら、


そのまま全身を見るように、目線を下ろし、



足元からゆっくりと目線を上げ、



優しい眼差しで、優を見つめたと思ったら、


ぎゅっと目を閉じた。




そして目を開け、


「許すわけには、いかないの」と、



ゆっくりと苦しそうに、絞り出すかのような声で言った。




「なんでよ......



優の何がいけないの?




お母さん......」




お母さんは唇を噛み締め、ぐっと私の腕を引っ張った。





「家になんか行っちゃいけない」



私は掴んできたお母さんの腕を引き離そうとした。



「いや!!」



「あすか!!帰ってもらいなさい!



帰って!!.......帰りなさい!!」




お母さんは、大きな声で優に向かって叫んだ。



優は一度下を向いて、また顔を上げお母さんを見た。





「また 来ます



許してもらえるまで  何度でも来ます」




優は深く頭を下げ、私を見ると、



小さく頷いて、



そして玄関から出て行ってしまった。





「優......」




私はお母さんの腕を掴み、


思いっきり腕を振って引き離すと、


玄関から飛び出して、優を追いかけた。







< 135 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop