優しい君に恋をして【完】
背が高くて、
髪がふわふわっと無造作にはねていて、
紺色のカーディガン
濃いグレーのズボン
黒いリュック
間違いない.....あの人だ。
ズボンのポケットに両手を入れて立っていて、
少し俯いていた。
私はまた、ゆっくりと階段を下り始めた。
そして、その人の後ろに並んだ。
後ろにいるだけなのに、
ものすごくドキドキする。
こんなに近くに.....目の前に、
あの人が立っている。
声をかけるって......やっぱできない!!
緊張しすぎる!!
後ろから見つめるだけで、こんなにも緊張するんだから、
顔を見たら、もう.....
その時、くるっとその人が振り向いた。
ぱっと、目が合って、
私は思わず少し頭を下げた。
すると、その人は少しびっくりして、
でも、ぺこっと頭を下げてくれた。
覚えていてくれたのかな.....
それとも、ただ単に私が頭を下げたからかな.....
また、その人は前を向いてしまった。