優しい君に恋をして【完】
エレベーターの中に入り、
【2】のボタンを押すと、
扉が閉まった。
扉が閉まると、窮屈な密室に、
優と二人、手を繋いでいることに、
なぜかドキドキしてきてしまった。
やけに今日はエレベーター内が狭い......
優の横顔を隣からちらっと見上げると、
優は上を向いていて、
その綺麗な横顔に、もっとドキドキしてしまっていたら、
もう、2階に着き扉が開いた。
いつものように受付の人に挨拶をすると、
「彼氏?」と聞かれたから、
「はい」とニヤニヤしながら答えた。
「すっごくかっこいい彼氏ね」と、
受付の人が優をジロジロと見たから、
優は、その視線に少し驚きながら、
ぺこっと頭を下げた。
「あすかちゃん幸せ者ね」
そう言われて、私はまた「はい」と笑った。
そして、二人で防音室が並ぶ廊下に行き、
一緒に椅子に座って扉が開くのを待った。
「受付の人が なんて言ったんだろうって
思った
早口だと 口を読むのがむずかしい」
少し俯きながら話し始めた優に、
気がつかなかったことを謝ろうと、肩を叩こうとしたら、
優がまた続きを話し始めた。
「今まで 聴こえない言葉とか
口を読み取れない言葉は
俺......
どうでもいいやって
知ることを諦めていたんだって
気づいたよ」
知ることを......諦めてた......
その時、防音室の分厚い扉が開いた。