優しい君に恋をして【完】
この駅から乗っていたんだ......
違う電車から、乗り換えてこの駅から乗るのかな?
それとも、ここが最寄駅なのかな?
いろいろ聞きたいけど、
できない、声をかけるなんて.....無理!
しばらくそのまま、
後ろ姿を見つめてホームで電車を待っていたら、
電車が遅れているアナウンスが流れた。
うわ.....間に合うかな.....
しかたなくしばらく待っていると、
目の前にいるその人が、ポケットから手を出して、
自分の腕時計を見つめた。
そして、電光掲示板を眺めて、
また、腕時計を見て、
ポケットに手を入れた。
大丈夫かな?間に合う?
人のことを心配している場合じゃないけど、
やっぱちょっと心配.....
その時、電車が来た。
5分だけの遅れだから、私は大丈夫だけど.....
電車の扉が開くと、
遅れたせいか、
車内が昨日よりもだいぶ混雑していた。
憧れの彼の後ろに並びながら、
電車に乗り込もうとしたら、
その人は扉の前で、スっと下がって、
私の後ろに回った。
「えっ.....?」
私が乗るのを躊躇していたら、
その人が私の背中をそっと押して、
私を先に電車に乗せてくれた。
そして、その人も電車に乗ると、
ドアと椅子の角に立った私を、
混雑から守るように、
私の両脇にある手摺を、両方掴んで、
私を囲むように立ってくれた。