優しい君に恋をして【完】
優の心
「お母さん、優来たから......」
夏、
7月も半ばを過ぎ、優と付き合ってから2ヶ月が経った。
学校帰り、いつも家まで送ってくれて、
玄関の中に入ると、
最初は、お母さんに優に会うように言っていたけど、
最近は、優が来たことだけを伝えるようになっていた。
だって、全然会おうとしてくれないから。
お母さんとは、優と付き合ってから、
あまり会話もしなくなった。
優が来たことを伝えても、完全に無視。
もう、このままなのかな......
本当に嫌だ。
でも、どんなに嫌だと言っても、
お母さんはほっといていいと言っても、
優は私をすぐに家に帰した。
玄関を出ると、いつも玄関先で少し話して、
優が角を曲がるまで見送っていた。
「もう少しで、夏休みだね」
玄関先でそう言うと、
優は少し俯いてしまった。
このままだと、夏休みになっても、
全然会えない。
今までの土日のように、
また、玄関先で少し話すだけの夏休みになってしまう。
もっと一緒にいたいのに。
お母さんが許してくれないと、
このまま私たちは、一歩も前に進めない。
俯いている優の手を握ると、優がふと顔を上げた。
「もっと一緒にいたい......」
私の口元を見た優は、私の手をぎゅっと握り返した。
そして、そのまま私の手を引いて、
また門の中に入った。
「えっ???優????」
優はぐいぐいと私の手を引っ張って、
玄関の扉を思いっきり開けた。