優しい君に恋をして【完】
白に近い淡いレモン色の、
首周りがゆったりと開いたTシャツに、
濃い目のデニムのパンツを履いている優。
玄関出てすぐのところで、
立ち尽くして、じっと優を見つめていると、
優は黒いゴツめの腕時計のついている左手で、
自分の襟足を触って下を向いた。
髪.....切ったんだ......
ゆっくりと歩いて、門を開け、
優の前に立つと、優が顔を上げた。
今まで前髪が目にかかっていて、
横の髪で、耳が少し隠れていて、
襟足も長めだったのに、
すっきりとした襟足、
耳周りも短くなって、耳が全部出ていて、
前髪も少し短くなり、
綺麗な二重の瞳がはっきりと見えて、
前髪の隙間から、きりっとした眉毛も見えた。
トップはいつものように、ふわふわと無造作にはねていて、
大人っぽい雰囲気だったのが、
髪を短く切って、急に幼くなった。
「髪、切ったの?」
顔を覗き込みながらそう聞くと、
優は、はにかむように笑った。
そしたら、瞳が全部黒目になっちゃって、
小さな右側だけの八重歯を見せて笑うから、
なんだかいつも以上に可愛い笑顔に、
「かわいいっ!」って、手話をつけて言ったら、
優は片手で自分の顔を覆って、下を向いてしまって......
顔から手を離して、下を向いたまま前髪を揺らすと、
真っ赤な顔で、顔を上げて、
ちょっと不機嫌そうに、私の手をパシッと掴むと、
何も言わずに、駅の方へと歩き出した。