優しい君に恋をして【完】
あすかに彼氏ができた。
ろう学校の子と聞いて、
ふと、ひとりの男の子のことを思い出した。
まさか、あの子じゃないわよね......
そんなはずないと思っていたのに、
玄関に入って来た、背の高い男の子は、
幼稚園の頃の面影を少し残した、
綺麗な顔立ちのあの子だった。
優ちゃん......
愕然とした。
どうしてあすかは、優ちゃんなんだろう。
どうしてまた、優ちゃんを見つけ出してしまったんだろう。
家に行くというあすかに、猛反対をした。
そんなことさせてはいけない。
どうしても、なんとしてもそれは止めなくちゃいけない。
私が反対したことを、自分のせいだと勘違いして、
優ちゃんが、あすかへの思いを伝えてきた。
あの頃はおとなしくて、
いつもニコニコしている可愛らしい女の子みたいな子だったのに、
こんなに自分の気持ちをはっきりと言う、
素敵な男の子に成長したんだ......
女の子のような可愛らしい幼稚園の頃から、
背の高いかっこいい高校生に成長した優ちゃんに、
本当は少し、感動している自分がいた。
でも、自分のしたことを思えば、
あすかが優ちゃんの彼女になることはできない。
許されるはずがない。
私は、思い出したくない過去を、
また、思い出してしまった。