優しい君に恋をして【完】
こんな時に限って、恋占いの本を選んでしまって、
恥ずかしくなって、
「あ、あっ、ありがとうございます!!」
私は奪うように本を受け取ると、直角にお辞儀をして、
その場から足早に、元の椅子に戻った。
ものすごくドキドキした。
また、目の前の席に成海くんが戻ってきて、
ちらっと上目で様子をうかがったら、
こっちを見ていて、
私を見て、笑ってくれた。
初めて見た、笑顔......
どうしようもなく、好きだと思った。
好きで、好きで、どうにかして近づきたくて。
でも、私には、無理で......
それなのに、
その日をきっかけに、
成海くんは、図書館で会うと私に、
「こんにちは」と、
挨拶をしてくれるようになった。
夢のようだった。
「こっ、こんにちは!」と返すと、
笑ってくれて......
もしかしたら、もっと仲良くなれるんじゃないかって、
そんなことを思ってしまった。
もしかしたら、成海くんは、
どこの高校の子だとか、貧乏だとか、
そんなので人を判断する人じゃないんじゃないかって、
勝手に自分の都合の良いように思ったりした。
毎日、毎日、挨拶をして、
毎日、毎日、私に微笑んでくれて、
少し、話しもするようになって......
私と同級生だということ。
同じ市に住んでいること。
名前の漢字は「しゅん」と読むこと。
お医者さんを目指していること。
成海くんを知れば知るほど、
私は、どんどん気持ちが膨らんでいった。
そして、高校3年になり、いつものように図書館を出て、
小さな喫茶店で働いていたら、
店に、成海くんが現れた。
後ろに、女の子を連れて......