優しい君に恋をして【完】
ショック過ぎて、トレイを持ったまま、
しばらく動けなくなってしまった。
でも、フロアで働いているのは、私ひとり。
接客をしないわけにはいかなかった。
「いらっしゃいませ」
小さなテーブルに向き合って座る二人に、
小さな声で挨拶をすると、
二人一緒に私を見上げた。
「あれ、図書館の.....」
成海くんに気づいてもらえて、嬉しいはずか、
なぜか、惨めな気持ちになった。
「知り合い?」と女の子に聞かれて、
「図書館でよく見かける子」
「そっか」
と、そこで私の説明が終わってしまい、
私は、注文を聞いてその場を去った。
あの女の子、有名女子大の付属高校の制服を着ている。
お金持ちなんだ......
悔しいほど、綺麗な子......
私にはないものを全て持っているような気がして、
悲しみから、悔しさに変わり、
そして、
腹の中にふつふつと、憎しみが湧いてきてしまった。
学校も、
家庭も、
容姿も、
恋人までも、
全てに恵まれている女......
憎くて憎くて、しかたなかった。