優しい君に恋をして【完】
それから、私は図書館に行くのをやめた。
そのままアルバイト先の喫茶店に行って、
勤務時間を早くしてもらった。
そしたら、あの女の子が、先にひとりで来るようになった。
先にひとりで来て、途中で成海くんが来て、
少し話して、ふたりで帰っていく。
毎日、そういう約束をしている二人に、
なんで自分に見せつけにやってくるのかと、
それはものすごい被害妄想だとわかっていたけど、
悔しくて、悔しくて、惨めで......
もし、私も裕福な家庭に生まれていたら、
もし、私も綺麗な容姿だったら、
私の隣に、成海くんがいたかもしれない......
二人向き合って、微笑み合っているのを見て、
涙が出た。
どんなに想っても、
どんなに好きでも、
私の想いは、伝わらない。
こんなに好きなのに、
ずっと毎日見てきたのに、
初めて人を好きになったのに、
この想いは、絶対に届かない。
私は、二人から目をそらし、
奥の着替える部屋に行って、
声を押し殺して泣いた。
悲しさと、悔しさと、憎しみと、
そんな気持ちになってしまう自分が、
惨めで......
涙が止まらなかった。
そして私はある日、
先にひとりで来て、
座っている彼女に、
声をかけた。