優しい君に恋をして【完】
私は、また封筒に戻して、それを引き出しの奥にしまった。
話しって......怖いと思った。
責められると思った。
私は一度もまだあの時のことを謝っていない。
謝らなくちゃいけないとわかっていたけど、
会いに行く手段がないことをいいことに、
私は、そのことから逃げていた。
電話なんて、怖くてできない。
できるはずがない。
もうゆうちゃんは卒園しているし、
小学校も違うから、
もう二度と会うことはない。
このまま電話をしなければ、もう関わることもない。
私はまた、逃げた。
でも、それから年月が立ち、
あすかの彼氏として、ゆうちゃんが現れて、
なんて運命なんだろうと膝から崩れ落ちた。
この二人は、引き寄せられるようにまた出会ってしまったんだ。
毎日毎日、真面目にあすかを家まで送り届ける高校生になったゆうちゃん。
いや......優くん。
私が逃げても、何度でも会おうとしてくる。
優くんが優しい子だということ、
私はよく知っている。
夜、戸棚の奥にしまいこんだ箱を開け、
中に入っていた折り紙を一枚一枚開いた。
毎日毎日、折り紙の手紙に書かれていた、
あすかへの優しい言葉たち。
【やさしくしてくれてありがとう】
【いつもいっしょにいてくれてありがとう】
【まもってくれてありがとう】
【おへんじありがとう】
【あそんでくれてありがとう】
【だいすきだよ】
もう、逃げられないと思った。
私は引き出しにしまいこんだ封筒を、
何年か振りに取り出し、中のメモを手にすると、
思い切って電話をかけた。