優しい君に恋をして【完】
部屋に彼氏を呼んだ時、
いったいどこに座ってもらうんだろうって思った。
どうしたらいいのかわからず、
部屋の真ん中で突っ立っていたら、
優が本棚の前に立ち、手話の本を一冊手に取った。
本棚に何冊も並んでいる、手話の本とDVD。
壁に貼ってある、指文字表。
付箋だらけの手話の本をペラペラとめくり、
本棚に戻すと、壁の指文字表を見つめて、
下を向いて笑った。
そして私の前に立つと、《ありがとう》とゆっくりと手話をした。
私が首を振ると、一歩私に近づいてぎゅっと抱きしめてきた。
ふわっと香るいつもの優の甘い香り。
そっと背中に手を回すと、
頬に優の温かい手のぬくもりを感じて、
顎をそっと持ち上げられると、柔らかい優の唇が落ちてきた。
ゆっくりと押し付けては、そっと離して......
優を見上げると、
伏せ目がちに私の唇を狙っている優が見えて、
少し唇を開きながら、近づいてくるその表情に、
きゅんとしながら、また目を閉じた。
優しいような
強引なような
求められているような
求めているような
強弱をつけて降ってくる優のキスに、
胸の中に抑えきれないものが押し寄せてきて、
唇が離れると、
ぎゅっと優にしがみついた。