優しい君に恋をして【完】
目の前に見える、淡いレモン色のTシャツ
甘い柔軟剤の香り
トクトクトクと規則的に頬に感じる優の鼓動
大丈夫だよね、手術って.....大丈夫だよね。
命に関わる手術じゃないし、
そんなに難しい手術じゃないって言ってたし。
でも、耳の中って、頭じゃん......
万が一のことがあったら、どうしよう。
どうしよう......
もし、優に何かあったら、どうしよう......
優の鼓動を感じれば感じるほど、
不安に駆られて、
優にしがみつきながら、涙が出た。
優が私の両肩をそっと押して、
顔を覗き込んできた。
「どうした?」
優の顔を見ると、もっと涙が出てきてしまって、
優の背中から手を離し、下を向くと、
すぐ横のベッドに腰掛け、
両手で顔を覆った。
優は、きっといっぱい悩んで悩んで、
決めた手術なんだ。
優は今、音が聴きたいんだ。
私は、優の決意を応援してあげなくちゃいけない......
不安に押しつぶされそうになっていたら、
優も隣に座ってきた。
そして、片手で私を引き寄せると、
ぽんぽんと私の頭を撫でて、肩にもたれさせた。
肩にもたれ、首元に頬を寄せると、頬に優の鎖骨があたった。
泣いている間ずっと、
優は私の頭を片手で優しく撫でてくれた。
ふと反対の手で、頬を撫でられると、
優が少し離れて、私の顔を覗き込んできた。
「あすか」
優しく呼ばれ、目の前の優を見つめると、
優は親指で涙を拭った。