優しい君に恋をして【完】
体を起こされ、ベッドに腰掛けると、
優の腕に自分の腕を絡ませ、ぎゅっと手を繋いだ。
優は私の顔を横目でちらっと見ると、下を向いて笑った。
「あすかー
ご飯できたからー、下りてきてー」
お母さんの声が聞こえて、
私は優の肩を優しく叩いてこっちを向かせた。
「ごはん、できたって。
下、行こ」
優は頷くと、繋いだ手を見て少し笑って、
ゆっくり手を開いて手を離した。
二人で下に行くと、
カレーの匂いがした。
まさか、カレー?と思いながらリビングのドアを開けると、
カウンターの向こうでカレーをよそっているお母さんが見えた。
お父さんの椅子を引いて、優に座るように勧めると、
優はペコッと頭を下げてから椅子に座った。
カウンターの中に入ると、カレーがよそられた皿を持って、
首を傾げた。
うちの食卓には、普段あまりカレーが出てこない。
お母さんは料理が得意なのか、いつも凝った料理が出てくる。
なのになぜ、
娘の彼氏が初めてうちで夕飯を食べるというのに、
得意料理ではなく、カレーなのか......
「お母さん、どうしてカレー???」
お母さんは、「ん?」と鍋に蓋をした。
「どうしてって......優くんカレーが大好物らしいから」
「え、そうなの?ていうかなんで知ってるの?」
お母さんはエプロンを外して、壁のフックにかけた。
「だから、今日優くんのお母さんに会ったんだって。
帰り際、桜木先生にも会ってね。
びっくりしちゃった。優くんのお兄さんが婚約者だったなんて」