優しい君に恋をして【完】
「なんで、優のお母さんに会ったの?どうやって会ったの?」
お母さんはちょっと目を泳がせてから、「ちょっとね.....」と答えを濁した。
私はまた首を傾げて、テーブルの方に回ると、
優の前にカレーを置いた。
緊張気味だった優の硬い表情が、カレーを見た瞬間笑顔になった。
あれ。ほんとだ。超喜んでる。
なんだよ、かわいいなぁ......カレーが好きなんて。
優の向かい側に座ると、お母さんも隣に座ってきて、
いつまでもカレーを見つめている優の顔を下から覗き込むと、
優はハッとしてこっちを向いて、顔を真っ赤にした。
「カレー好きなの?」
そう聞くと、優は自分の襟足を触って、頷いた。
「いっぱい食べてね」
お母さんの言葉に、「ありがとうございます」と優は手話をつけてお礼を言った。
それから3人でカレーを食べた。
お母さんは、ちゃんと口をゆっくりと大きく動かして、
優に話しかけてくれた。
優も、ちゃんと発音に気をつけて話している感じがした。
いつもよりもゆっくりと話している。
本当に綺麗な発音だと思った。
ちゃんとお母さんに通じていたから、
きっと、お母さんも安心してくれたと思う。
結局優はカレーを3杯食べ、
帰り際、
玄関で「今度からは、気軽に、いつでも上がって」というお母さんの言葉に、
優は深々と頭を下げた。
「門まで行く」と、私が靴を履くと、
一緒に玄関を出た。