優しい君に恋をして【完】
願い
一学期終業式
明日、優は再手術を受けるために、
東京へ行く。
体育館で舞台に立つ校長先生の顔を見ても、
浮かんでくるのは、優のことばかりだった。
手術への不安
離れる不安
私の頭の中は、不安でいっぱいだった。
教室に戻り、前の席に真菜が座ってこっちを向いた。
「夏休みは、彼氏とどっか行くの?」
真菜はニヤニヤしながら聞いてきた。
「それがさ......」
私は真菜に優の耳の手術のことを話した。
「そうだったんだ......なんか大変だね」
「うん......」
大変......だよね。
「お守りみたいなものあげた?」
?
「お守り?」
「手術するんでしょ?結果がどうであれ、
無事に帰ってきてほしいんでしょ?
そのためのお守り」
「なるほど......それいいね」
「ミサンガは?」
「ミサンガかぁ......
入院中手首につけていて邪魔じゃないかな......」
私がうーんと考え込んでいたら、
真菜は自分のスマホを取り出して、指でシュッシュッと画面をこすった。
「これこれ、私この前これ作ったんだけど、
レザーで編んだから、結構かっこよくできたよ。
今彼氏がつけてくれてる。
取り外しできるように、片側輪にして作ったから、
これならいいんじゃない?
ここに作り方載ってるから。
簡単だったよ、1時間もしないでできちゃった」
真菜のスマホの画面には、
細い2色の革紐が編みこまれたミサンガのつくり方が映っていた。
「私、携帯だけど、見れるかな......」
「パソコンは?パソコンの方が見やすいよ。
とりあえず帰りに、手芸屋さんに寄ってみなよ。
あすかの降りる駅ビルにでかいの入っているじゃん。
あそこなら、いっぱいいろんな色の売っているよ」
真菜は、自分の手帳を取り出して、
かわいい付箋を取り出し、
ホームページの名前と、手芸屋さんの名前を書いて、
私に差し出した。
「わかんなかったら、いつでも電話して」
そっと付箋を受け取ると、私も手帳を取り出して、そこにぺたっと貼り付けた。
「ありがとう」
真菜は「ううん」と首を振って、自分の席に戻っていった。
ミサンガか.....
優は、そういうアクセサリーみたいなものを、
付けるタイプには見えないけど、
付けてくれるだろうか......