優しい君に恋をして【完】
帰り、いつものようにホームで待ち合わせをして、
一緒に電車に乗り、最寄駅に着くと、
私は優の肩を優しく叩いた。
隣から顔を覗き込むように首を傾げた優に、
「買い物、してもいい?」と聞くと、
目を細めて頷いた。
優の手を引いて、駅ビルの入口に行くと、
館内の案内図から、
真菜に教えてもらったお店の名前を探した。
「あった、4階だ」
案内図を指差して、優に教えると、
小さく頷いて、
エスカレーターの方へと歩いた。
私を先にエスカレーターに乗せて、
優はそっと手を繋ぎ直した。
顔だけ後ろを振り向くと、いつも見上げる形の優が、
私と同じぐらいの目線になっていた。
上の階の方に視線を向けている優の顔を、
肌が綺麗だな
黒目が大きい......
下まぶたは少し垂れ気味なのに、
眉毛はきりっと上がっているんだ......
唇の形が綺麗......なんて、盗み見していたら、
優が目線を下ろして私と目が合った。
すると優は、下を向いてしまって、
また顔を上げると、
《前を見なよ》と、片手で手話をした。
盗み見しているはずが、じっと見ていたことに気づいて、
恥ずかしくなって、前を向いた。
そして、次の階に降り、
また上りのエスカレーターに私を先に乗せて.....
ちらっと後ろを見ると、
今度はまっすぐ私を見つめていたから、優とすぐに目が合ってしまって、
もう、振り向けなくなってしまった。