優しい君に恋をして【完】
家に帰ると、夕飯を済ませ、
リビングのパソコンで真菜に教えてもらったホームページを検索した。
「何しているの?」
隣からお母さんが画面を覗き込んできた。
「優の手術が無事に終わるように、ミサンガを作ろうと思って。
明日、東京に行っちゃうから、今日中に作らないと」
「そう......」
お母さんは、私の膝の上にある革紐を指でつまんだ。
「お母さんもお父さんに作る?失敗してもいいように、たくさん買ってきたから」
「お母さんはいいよ......」
そう言ってお母さんは指から革紐を離した。
「お母さんって、どうしてお父さんと結婚したの?」
「えっ......」
ずっと不思議だったことを、思い切って聞いてみた。
お母さんは少し驚いて、私の顔を見ると、
下を向いてしまった。
「そうね......お母さんは、
普通に人を好きになる方法が.......
わからなくなっちゃったの」
お母さんは下を向いたまま笑っていた。
「普通に人を好きになって、
その人も、自分を好きになってくれて.......
それって、本当にすごいことよね。
お母さんは、あすかがうらやましいよ......」
お母さんは顔を上げると、「頑張って」と言って、
リビングから出て行ってしまった。
普通に人を好きになる方法がわからないって、
どう言う意味だろう。
お母さんは、お父さんのことが、
やっぱり好きじゃないのかな......
閉められたリビングのドアを見つめて、考え込んでしまった。
やばい、こんな違うこと考えている場合じゃなかった。
早く作らなくちゃ.......
私はまた画面を見て、革紐を持った。