優しい君に恋をして【完】
優は少し切なそうに、首を傾げて私を見つめていた。
笑ってと言われたのに、泣いてしまいそうになって、
また下を向いた。
そうだよね......この手術は悲しい手術じゃないよね。
前向きな手術なんだ。
そうだ、応援しなくちゃ......
頑張れって
大丈夫だよって
私は背中のリュックを前に回して、
ポケットからミサンガを取り出した。
そして、優の左手を掴むと、
ミサンガを手首に回して、ぎゅっと縛った。
優は手首をじっと見てから私を見た。
「これ、私が作ったの。
優の手術が、無事に終わりますようにって、
優の願いが叶いますようにって願いながら編んだ。
これ、簡単に取り外しができるから、えっと.....」
取り外し方を教えようと、またミサンガをつまんだら、
ガシッと手首を掴まれて止められた。
「外さないよ」
えっ......
「でも、手術の時にじゃま......」
「外さないよ 絶対に」
手首を掴んだまま、真剣な表情で言った優に、
私はゆっくりと頷いた。
優はそっと手首を離すと、
《ありがとう》と手話をした。
「じゃあ、行くから」