優しい君に恋をして【完】
次の約束が欲しいと思った。
じゃなきゃ私......不安で怖くて......
じっとこっちを見ていた優は、ふっと笑って下を向いた。
そして顔を上げると、大きなバッグを肩にかけ直して、
指を動かした。
遠くて口の動きまでわからなくて、
よく目を凝らして、手話を読み取った。
《花火 一緒に 見よう だから・・・》
ん???
その続きの手話がわからなくて首を傾げた。
同じ手話をして首を傾げると、
優は指文字で伝えてきた。
《ゆ か た 》
あぁ、浴衣か。
《楽しみにしてる》
8月末の花火大会のことかな......
《わかった》と手話をすると、優は笑って、
小さく頷くと、角を曲がっていった。
一緒に行けるよね。
その頃には退院しているよね。
大丈夫
大丈夫
何度も不安になる気持ちを、
大丈夫という言葉でかき消しながら、
改札から離れ、家へと帰った。