優しい君に恋をして【完】
お母さんは、私の頭をずっと撫でていた。
「あすか。
あすかはもう、優くんに聞こえる耳をあげているじゃない」
予想外の言葉に、私は両手から顔を出して、お母さんを見上げた。
お母さんは優しく笑っていた。
「あすかと出会って、優くんは、
【自分の音】を取り戻そうっていう気持ちになった。
それって、もうあげていることなんじゃないかな.......
それに、
もし、手術しても聴こえないままだとしても、
あすかがそばにいれば、
あすかが、優くんの【音】になるでしょ。
もう、あげているんだよ。
十分、あげているんだよ......」
そんな......そんな風に思ったこともなかった。
お母さん......
「大丈夫。優くんは大丈夫。
手術が終わったら、優くんのお母さんから電話もらうようにしているから。
一緒に電話を待とう。
本当はね、あすかを連れてお見舞いに行きますって言ったんだけど、
優くんが、入院中の姿をあすかに見られたくないって言ったみたいで。
優くんの気持ちを大切にしてあげようね。
そうそう、今ね、
手術を頑張っている優くんにケーキを焼こうと思っていて。
二人で食べよう。
あすかも手伝ってくれる?」