優しい君に恋をして【完】
お母さんは、エプロンのポケットからハンカチを出すと、
私の涙を拭った。
私が頷くと、お母さんは今までに見たことないぐらい、
優しい顔をした。
「二人は最初から、こうなる運命だったのね......
さ、ケーキ作ろう!ほら、もう泣かない!」
そう言ってハンカチをしまうと、またキッチンに戻った。
私はピアノの蓋を閉めて、
キッチンに入ると、手を洗った。
お母さんと一緒にケーキを作るなんて、何年ぶりだろう......
今日のお母さんは、やたらとテンションが高くて、
それは、私を笑わせようとしているんだってことがバレバレで、
なんだか本当におかしかったけど、嬉しかった。
一緒にケーキを作って、バカみたいに笑って、
オーブンで焼いている間、お茶をして、
優との出会いを話したら、お母さんはどこか切なそうな顔をしていたけど、
ちゃんとじっくりと聞いてくれた。
夕方になっても鳴らない電話に、
少し心配になった時、ケーキが出来上がった。
お母さんがケーキの取り皿を出したから、
「電話が来てからでもいいかな......」と、まだ今は食べたくない気持ちを言うと、
お母さんは、「そうしようか」と、笑った。
ちょっと部屋が静まり返った時、
お母さんの携帯が突然鳴ってびくっとした。
お母さんは、「うん」と携帯になぜか頷きなから、
電話に出た。
「もしもし、遠山です
はい、いえ.....大丈夫です。
はい、
あ.......そうだったんですね。
えぇ......そうですか......」