優しい君に恋をして【完】
私は、優からメールが来るまで、
待つことにした。
待つしかなかった。
優のメールが途絶えてから、
1週間が過ぎ、
2週間が過ぎ.......
もう明日は8月30日。
川沿いにある公園でやる花火大会の日だ。
ベッドに座りながら、脇に置いてある紙袋の中を覗いた。
淡いピンクの浴衣。赤い帯。
《ゆ か た 楽しみにしてる》
優の手話を思い出した。
ちゃんと用意したよ.....優。
でも、まだ東京なのかな......
花火大会には、間に合わないのかな......
その時、着信の音が鳴って、携帯を見ると、
真菜からだった。
「もしもし?」
【あぁ、あすか?久しぶりー元気?】
「うん、まぁ。どうしたの?何かあった?」
【うん、えっと.....彼氏はどうしたかなぁ.....って、
ちょっと気になってさ】
「真菜......もしかして心配してくれたの?」
【全然!心配なんかしてないよ!
いや、もう帰ってきたのかなぁって】
「ううん。まだ、帰ってきてない。メールがこなくなっちゃってさ。
なんでかわからないんだけど。
結果もわからなくて、私もメールしづらくて.....」
【そうだったんだ......
あのね、白石くんがクラスの何人かに声かけているみたいで、
みんなで明日、花火大会に行こうって話になってて。
私も彼氏と一緒に参加するんだけど、
あすかはどうする?
花火の写メでも撮って、彼氏に送ってあげたら?】
花火の写メか......
それなら、送りやすいかな。
優も返信しやすいかも。
「そうだね。私も参加するよ」
【わかった!白石くんにも伝えておくね。
ちなみに女子は全員浴衣を着ろだって。
時間は7時に公園にある、リスの像の前なんだけどあすかわかる?】
「あぁ、なんとなくわかる」
【じゃあ、そこで集合だから。また明日ね】
「わかった、ありがとう、真菜」