優しい君に恋をして【完】
携帯を閉じて、紙袋から浴衣を取り出した。
優に見てほしかったな......
膝の上に乗せた浴衣に、涙の雫が落ちた。
ぽたぽたと落ちて、
浴衣に涙の模様がついた。
次の日
夕方まで待ったけど、
やっぱり優からメールは来なかった。
お母さんに聞いても、
桜木先生に聞いても、
連絡はないって言っていて、
優が今どういう状況なのかが全くわからなかった。
お母さんに浴衣を着付けてもらって、
髪もアップにまとめてくれて、
お母さんは、かわいいかわいいと、親バカ全開で、
携帯で何枚も写真を撮っていた。
「ねぇ、お母さん、もういいかなぁ。
時間間に合わないよ。
結構公園まで遠いし」
お母さんは携帯をエプロンのポケットにしまった。
「暗い中ひとりで心配だから、
お母さん近くまで車で乗せていってあげるから。
何時にどこだっけ?」
「7時に公園のりすの前」
「公園までは、規制がかかっていて行けないだろうから、
行けることろまで行ってあげるね。
帰りも連絡くれたら迎えに行くから。
まぁ、気晴らしにお友達と楽しく花火見てきなさい。
川沿いずっと、露店が並ぶでしょ?
きっと、楽しいわよ」
お母さんは私の浴衣を直すと、出かける準備をし始めた。