優しい君に恋をして【完】
振り......向いた........
私はその場から動けなくなってしまった。
涙が自然と、どんどん溢れ出してきて、
頬を流れ落ちる涙を拭うことも忘れて、
ただ、立ち尽くしてしまった。
「ただいま」
振り向いた優はそう言って、
大好きな笑顔を見せた。
私は両手で口を押さえて、
その場に泣き崩れた。
しゃがみこんで泣いていたら、
目の前に、優のサンダルが見えて、
優もしゃがんで、私の顔を覗き込んできた。
「ずっとメールできなくてごめん。
花火大会までには、帰れるように、
リハビリ頑張ってて......」
リハビリ.......
「さっきこっち着いたから、結局ぎりぎりだけど。
手術の結果は、自分でちゃんと直接あすかに伝えたかったから。
周りには、あすかに言わないでほしいって伝えていたんだ」
そんな......
私が顔を上げると、目の前にしゃがんで、
かわいく笑っている優の笑顔が見えた。
手術をしても、何も変わらない。
私の知っている優の笑顔だ.......
優は手を伸ばして、私の頭を撫でた。
「さっき、あすかの家に行ったら、
花火大会に行ったって聞いて。
お母さんが近くまで、車で送ってくれたんだよ」
「お母さんが......?」
私が手話をすると、頭を撫でていた手で、
私の手首を掴んで、その手を私の膝に戻した。
「もう、手話をしなくていいよ」
手話を………
やっぱり、
さっき振り向いたのは……
「優…………?」
優はゆっくりと頷いた。
「聞こえるよ.......あすかの声」