優しい君に恋をして【完】
聞こえる..........
私の声が......優に......
「聞こえるの......?」
特別口を大きく動かさずに、普通に言ってみると、
優はまた、大きく頷いた。
「ほんとに..........?」
優は笑って、また頷いた。
そして、左を向いて、右耳についている黒い機械を見せた。
それは想像していたものよりも、小さくて薄くて、
そんなに目立つものではなかった。
聞こえるんだ。
反応があったんだ。
私の声が、
優に届いているんだ........
「うぅ......うわぁぁぁ........!!!」
もう、いろんな想いがこみ上げてきて、
子供みたいに大きな声を出して、
優の目の前で泣き出してしまった。
優はまた、私の頭を撫でて笑い出した。
「すごい、大きな声で泣いていたんだな.......」
「違うよ!今だけだよ!バカ!
優のバカ!
バカバカバカ!!!」
優の膝をぺしぺし叩いて泣きながら怒った。
「どんだけ心配したと思ってるの!!!
もう、こんな......バカ!!
優のバカバカバカ!!!」
膝を叩いている私の手の手首を、優がガシッと掴んだ。
「ごめん......」
素直に謝られて、優の顔を見ると、
優は首を傾げて、私の顔を覗き込んでいた。
「ごめん。あすか」
ずるいよ、優は。
そんな首を傾げてかわいく謝られたら、
もう、全部許しちゃうじゃん.......
優は手首をそっと離して、
私の目の前に、大きな手を開いて差し出してきた。
差し出してきた手首には、黒い腕時計とミサンガ。
私はミサンガを指でそっとつまんだ。
「これ、すごい心強かった。
ありがとな.....」
そしてまた、手を開いて差し出してきた。
「立てるか?
浴衣姿、見せてよ」