優しい君に恋をして【完】
真菜たちのそばまで行くと、
みんな花火ではなく、私と優を見た。
「あすか......彼氏帰ってきたの?」
真菜が彼氏から離れてこっちにきた。
「うん」
「よかったじゃん!ほんと......よかったね!」
「ありがと、真菜。
あ、えっと.......同じクラスで友達の真菜」
優はやっぱり私の口元を見ていて、
そして真菜にぺこっと頭を下げた。
真菜も「こんばんは」と優に軽く頭を下げて、
「かっこいいね」と私に小さな声で言うと、
また彼氏のところに戻っていった。
すると、今度は白石くんが近付いてきて、
優の前に立った。
「こんばんは」
挨拶をした白石くんに、優は優しく微笑んで、「こんばんは」と返した。
「ひとつ、質問してもいいですか?」
優は少し不思議そうに、首を傾げてから、頷いた。
「手術を受けたのは、
遠山さんのためですか?」
質問してきた白石くんを、
優はまっすぐ見つめていた。
「違う」
優の言葉に、白石くんは少し驚いていた。
「自分のためだよ」
白石くんは、はっとして下を向いた。
そしてまた顔を上げると、ちょっと睨むように優を見た。
「もし、今日彼氏がこなかったら、
俺が遠山さんと一緒に、花火を見ようと思ってました」
「白石くん!
違う、優.....違う!私は......」
思わずいつもの癖で、手話で優に言った。
優は私の顔を見ると、ふっと笑って、
そのまま優しい眼差しで白石くんを見つめた。
「どうして、そう思ったの?」