優しい君に恋をして【完】
「優?」
となりから呼びかけると、優は私の方を見た。
「射的、やる?」
優はやっぱりまた私の口元を見て、
「射的か......」と言ってから、軽く頷いた。
「じゃあ、後ろからついてきて」
白石くんは、男子たちの中に戻っていった。
「優?」と呼びかけると、
こっちは見るんだけど、
優は、じっと私の口元を見て、
何を話すのかを待っているような感じだった。
「やっぱり、手話をした方が、わかりやすい?」
そう、手話をつけて聞くと、
優は首を振って笑った。
「手話はいらないよ。
でもやっぱり、人ごみとか、
そういう騒がしいところだと、
聞きたい音だけを拾うことはできないから、
口の動きは見ないと、
なんて言ってるのか、聞き取りにくいな......」
そっか.......
そういえば、静かなところなら、
手話をしないでも会話できるって言ってたよね。
騒がしいところだと、やっぱり聞き取れないんだ。
ここは、川沿いの道からすぐだから、
さっきいた場所よりも騒がしい。
川沿いの道に行ったら、
もっと人が密集していて、賑やかだけど、
大丈夫だろうか......