優しい君に恋をして【完】
「川沿いはもっとうるさいよ?
大丈夫?」
優の顔を見て、手話をしないでゆっくりと話しかけると、
優はふっと笑った。
「俺は大丈夫だよ。
あすかには悪いけど、
周りが騒がしいところで話す時だけは、
口の動きを見せてもらってもいいかな.......」
切なそうに言った優に、
「もう!」と言って繋いだ手をブンブン振って怒ると、
優は目を大きく開いて驚いた。
「悪いなんて、思わないの!
私、優の顔を見て話すの好きだもん!
私、決めた!
これからもずっと、どんな時も、
どんな場所でも、
優の顔を見て話すって決めた!
優の顔見ていたいから、
ずっと見ていたいぐらいなんだから!」
あれ、
なんか今私、
すっごい恥ずかしいことを言ったような......
顔に火がついたように熱くなってしまい、
下を向いた。
下を向いていたら、優しく頭を撫でられて、
ちらっと優を見たら、優は目をそらして、
「ありがとな」って、
頭から手を離すと、
私の顔を見ないまま、
繋いだ手を引いて、川沿いの道へと向かった。