優しい君に恋をして【完】
「すぐ右側の人の言葉はわかったんだけど、
あとは周りの雑音がひどくて、言葉が聞き取れない......」
「あ、そっか、遠山の彼氏は耳が不自由なんだよな。
どうやったら、伝わりやすい?」
森下くんが聞いてきて、
私が答えようとしたら、
優が答えた。
「ゆっくり少し大きめの声で、
口を見せて話してくれると助かる」
「わかった。
おーい、注目注目!
遠山の彼氏、えっと、名前は?」
「成海」
「成海ね。
成海は耳が不自由だから、
ちゃんと成海にも伝わるように話そうぜ。
ゆっくり大きめの声で、口を見せてしゃべること。
なんかしゃべる時は、挙手しろ!」
「あはははっ、なるほど!それいいね!」
「はい!はい!」
「よし、話せ」
「もう一回、チャンスをください!」
「ダメだっての。お前はジュースを7本買ってこい」
「あははははっ」
優を見ると、優も一緒に笑っていて、
大丈夫かな、聞こえたかな……って思った。
確認するのはやめた。
なんか、聞こえた?って聞くと、優を追い詰めているような気がしたから。
機械をつけても、
私は今までと変わらない態度でいてあげよう。
そう思った。