優しい君に恋をして【完】
私の言葉に、優は前を向いて首を振った。
「大丈夫だよ」
また、カランコロンと下駄の音だけが響いて、
暗い中、何も話さずに歩いた。
今までなら、暗いと口も見えにくいし、
手を繋いでいると手話がやりにくいしと、
暗いときは、あまり話さずに歩くことが多かった。
でも今、
暗いけど、静かだから......
「花火、綺麗だったね」
前を向いたままの優に話しかけると、
優は「うん」と頷いた。
「楽しかったね」
「うん」
「みんなは、優が年上ってわかってたの?」
「あはははっ、わかってないかもな」
「いいの?」
「別に気にしないよ」
「そっか」
「友達に......なりたいと思ったから」
「友達に?」
「うん」
「そっか。
友達になれてよかったね」
「うん。
俺.........」
暗い中でも、
優が前を向いたままでも、
手を繋いで歩いていても、
普通に会話のやり取りができたことに感動していたら、
優がまっすぐ前を向いたまま、
言葉の続きを言った。
「あすかと出会って、
世界が変わったよ」