優しい君に恋をして【完】
優は私の肩から手を離すと、
ちょっと乱暴に手を繋いできて、
また歩き出した。
自分の髪をくしゃくしゃっとして、
顔をそらしてしまった優。
そんな、怒んなくてもいいのに。
「私の方が、ずーっと優のこと好きなのは、
ちゃんとわかってんのかな......」
手を引かれて、下を向いたまま独り言のようにつぶやくと、
くるっと優が振り向いたから、少しびっくりして顔を上げた。
こんな小さな声でも、聞こえたんだ.......
「俺の方が......やっぱ、いいや」
そう言うと、また前を向いて、
しばらく歩くと、家の前に着いた。
優は背中の小さなボディバッグを前に回して、
そこに引っ掛けていた紫色の水ヨーヨーを外すと、
私の手をそっと持ち上げた。
そして、中指に輪ゴムを通してくれて、
なんだかその行為が、指輪をはめてもらっているみたいで、
嬉しくなってしまって、
その手を前に伸ばして見つめた。
「なにしてんの?」
ふっと優が笑って、首を傾げたから、
やっと笑ってくれたって、また嬉しくなって、
ニヤニヤしながら「内緒」って、答えた。
伸ばした私の手に、
優の大きな手が触れて、
優の体温が手のひらに伝わってきた。
そして指を絡ませると、ゆっくりと下ろされ、
伏せ目がちの優の顔が近付いてきたから、
私はそっと目を閉じた。
会えなかった時間を埋めるかのように、
求め合った。
長く
激しく......
ふっと唇が離れて、優を見つめると、
優は片手で私の頭を引き寄せ、
胸の中にストンと抱きとめた。
「もう、この先ずっと、
ずーっと一緒にいられるよね。
もう、こんなに離れることなんてないよね.......」
「うん」
「もう二度と、離れたくない......」
優は片手で私の頭をポンポンと撫でると、
もっと強く抱き寄せた。
「わかった」
よかった.......
優の答えに、心からホッとして、
優の胸の中で目を閉じた。