優しい君に恋をして【完】
最寄駅に着き、
電車を降りると、
階段を上り、改札に向かった。
改札を通ると、目の前を知っている人が通り過ぎた。
「桜木先生?」
私が声をかけると、先生は、くるっと振り向いた。
「あすかちゃん」
先生は、私のところに近づいていた。
「今学校の帰り?」
「うん。先生は?」
「私はね......今東京から帰ってきたところ」
見ると、先生は少し大きめのバッグを持っていた。
「旦那さんになる人と会ってたの?」
「うん......なんだか風邪ひいちゃったみたいだから、心配で。
でも結局仕事に行っちゃったから、ほとんど会えなかったんだけどね」
先生は少し悲しそうな顔をした。
こんなにかわいい彼女を、ほっといて仕事に行っちゃうなんて、
しかも、こんな遠くから東京まで会いに行ったのに、
冷たい彼氏だな......
「先生は、それでいいの?冷たくない?」
先生は、クスッと笑った。
「全然。冷たくないよ。
私にも優しいし、患者さんのことも、
とても大切にしていることをわかっているから」
「そういうもんかな.....」
先生は、またニコッと笑った。
「あすかちゃん、ちょっと甘いものでも食べていかない?
私、ご馳走するから」
「甘いもの!いいの???行く!!」
私は、先生の細い腕を掴んだ。