優しい君に恋をして【完】
しばらくそのままクリスマスツリーを眺めていたら、
「あっ」と、優が耳を押さえた。
耳に何かあったのかと心配になって、
「どうしたの?」と隣から顔を覗き込むと、
優は耳の後ろを触って笑った。
「電池が切れたから、交換しないと」
電池?
そっか、そういうこともあるんだ.......
「どっか座ってやったほうがいいよね」
周りを見渡すと、街路樹の道沿いにいろんなお店が並んでいて、
その中でも、小さな可愛らしいレストランが目についた。
「そこの、かわいい白い壁のレストランに入ろうか?」
そう言って、優の顔を見ると、
優はぼんやりとしていて、
私が腕を少し引っ張ると、「ん?」と首を傾げた。
あ.......電池が切れているから、
聞こえないんだ.......
「そこの、白いお店に、入る?」
久しぶりに手話で伝えると、
優は、ハハッと笑って、
《わかった》と、手話で答えた。
私も笑うと、
ほんの少し白くなり始めた道を、
二人寄り添いながら小さなレストランへと歩いた。