優しい君に恋をして【完】
店内は、白を基調とした綺麗なレストランで、
カップル達で混み合っていた。
店員さんに通された場所は、ちょうど窓際で、
窓の外を見ると、
公園のクリスマスツリーが見えた。
《いい場所だね》
手話で伝えて、窓の外を指差すと、
優も外を見て、笑いながらコートを脱いだ。
優の脱いだコートを受け取り、
壁のフックにあるハンガーにかけると、
私も脱いで、一緒に小さなテーブルに向き合って座った。
優は水色のシャツの上に、
紺色のケーブル編みニットのカーディガンを着ていて、
コロンとしたバスケットボタンが、ちょっとかわいいと思った。
私がメニュー表を持つと、
優は後ろを向いて、
椅子に掛けたリュックの中から、
小さな黒いケースを出し、
中から1センチぐらいの四角い物を取り出した。
そして、自分の耳から機械を外して、
下の部分を引っ張ると、
ケースの中から出した物と同じ物が出てきた。
それを交換すると、また耳につけて、
交換した物をケースに入れると、リュックにしまった。
「聞こえた?」
恐る恐る顔を覗き込みながら聞くと、
「よく聞こえるよ」と、笑った。
「ちょっとこのお店、ガヤガヤしてる?大丈夫?」
優は、出された水を飲んで、ははっと笑った。
「もう、だいぶ慣れたよ。
雑音に慣れたっていうのもあるけど、
あすかの声に慣れたっていうか.......
あすかの声は、ちゃんとわかるよ」